Recycling金属リサイクル
金属リサイクル業 盗難の現状と金属くず条例
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金属リサイクル業をとりまく金属盗難の現状と金属くず条例・規制についてまとめました。
近年、金属の盗難が相次いでいます。太陽光発電のケーブルや、側溝のふた(グレーチング)、個人宅のエアコン室外機や給湯器までさまざまな種類のものが盗難され、金属くずとして転売されています。令和6年の金属盗難の認知件数は、4年前の約4倍に増加しました。この背景には、金属スクラップ価格の高騰と、金属くず買取に関する法規制の抜け穴とも呼ぶべきものが関連しています。
令和5年度の金属盗難の品目別認知件数は、その半数以上が金属ケーブルになります。近年も太陽光発電のケーブルが大量に盗まれ発電を再開できない事態に追い込まれる事件が発生したりしています。
金属の種類別の盗難認知件数は、銅が過半をしめます。銅の価格は4年で、およそ2倍に高騰しています。電気自動車や半導体、再生エネルギーの普及により、世界的に銅の需要が高まっているためです。その他金属ものきなみ高騰しているため、市況によっては盗難の対象が今後別の金属に推移していく可能性もあります。
金属の盗難が発生している地域は、関東地域が大部分をしめます。この状況に対応して、この後に述べる金属くず条例の制定地域も関東を中心として分布しています。
金属くず等の盗難は、世界的に高まる金属需要の高まりを背景とするものですが、もう1つ要因があります。金属くずをとりまく法規制です。一度、使用された中古品などを買い取る業者は、古物営業法という法律に基づいて営業許可を受けています。古物営業法では都道府県公安委員会を受け、取引相手の本人確認や、帳簿保存、不正の品であると認められる場合の警察への申告義務などがありますが、金属くずは、古物営業法の範囲外となるため、これらの規制を受けないのです。 古物は、中古であっても客観的に本来の用法にしたがって使用できるか、を基準に古物に該当するか判断するためです。 廃棄物であれば、廃棄物処理法やその他リサイクル法の適用も受けますが、価値のあるものとして業者に買い取ってもらうため、これにも該当しません。
金属の買取りには古物営業法の適用がないので、業者が自主的に身元確認をしない限り、買取相手の身元確認は行われません。そうした事情を見越して、金属の窃盗犯は身元を確認しない業者を把握した上で買取に持ち込みます。 また、持ち込まれた金属くずが盗品であるかどうかの判断は、業者側には難しいため、現状では盗品の処分や流通を抑止することはたいへん難しくなっています。
各地で相次いでいる太陽光発電施設の事件については、不法滞在の外国人グループが組織的な犯行をおこなっており、そして、複数の県で犯行を重ねて、その資金源にしていると警察ではみています。日本人が外国人グループと共に犯行に及んでいたり、あるいは日本人が単独で給湯器ですとか、室外機の窃盗を繰り返していたという事例もあります。 海外では、金属リサイクル業は許可制で、日本の方がハードルが低いため、日本で金属リサイクルを行い、円安の状況の中、日本国内で調達した金属を不適正に輸出して為替利益とあわせて利益を得るということも行われているようです。 各種法令を遵守している適正業者は、法令を遵守していないコンプライアンスの低い不適正業者と競争しても価格競争で負けるため、「悪貨が良貨を駆逐する」状態になりかねない状態になっています。
そうした金属くずの規制の抜け穴をふさぐため、各自治体は独自に”金属くず条例”を制定し、相手方の本人確認義務や、不正品の警察への申告、帳簿記載などを定めています。 しかし、各自治体で対応をおこなっても条例が制定された自治体にとっては、一定程度の効果がありますが、盗難金属の持込先が、条例の制定されている自治体から、未制定の自治体へ、広がっていく事態を招きます。1つの自治体で規制を厳しくしたとしても、他の規制が緩い自治体に逃げるだけです。 そうした事態を受け、警察庁は令和6年5月 こうした金属盗難を「治安上の重大な課題」という認識を示し、「金属盗対策に関する検討会」を立ち上げ、法規制のあり方、金属買取側の本人確認義務や、犯行に使われる用具の取り締まりなどについて協議を始めています。
金属盗難の現状と金属リサイクル関連業の規制ついてご説明しました。 相次ぐ金属盗難を踏まえ、これまでは各自治体での条例での対応となっていましたが、警察庁は全国的な法規制について検討をおこなっています。金属の盗難を減らし、法令を遵守する適正業者を守るには全国的な法整備が必要です。