Recycling金属リサイクル
金属スクラップヤード規制
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金属スクラップなどを屋外で保管する業者を規制する、金属スクラップヤード規制条例に関して概要をまとめました。
金属スクラップヤードを規制すべく一部の自治体で条例化が相次いでいます。金属スクラップヤードを規制する条例は、都道府県レベルでは千葉、埼玉、福島の各県で条例化されています。千葉県は令和6年4月1日施行、埼玉県と福島県は令和7年1月1日施行となります。 スクラップヤードは、主に再生資源物の保管場所のことを指します。有価で取引される金属スクラップなどは産業廃棄物処理法では規制の対象とならず、全国的な規制は存在しません。ほかにも、ヤード規制には、金属スクラップのほかに自動車ヤードを対象としたものもあります。自動車ヤード規制は、主に自動車盗対策として制定されるもので、上記3県以外にも複数の県で条例化されています。
最近増えている金属スクラップヤードを対象とした条例は、金属スクラップヤード業者に対する近隣住民の生活環境への影響、苦情の増加を踏まえ不適正な業者を規制すべく制定されたものです。関東圏を中心として広がる金属スクラップヤード業者と近隣住民のトラブル増加により、都道府県レベルだけでなく市町村レベルでも条例化の動きが活発になってきています。
金属スクラップ等を取り扱うリサイクル業やストックヤード業に対する規制の高まりは、大きく2つの目的があります。 1つ目はすでに述べたとおり、生活環境の保全のための規制です。 もう1つは、世界的な金属価格の高騰を背景とした金属窃盗の増加や自動車窃盗の増加です。金属くずは中古品に当たらないため古物営業法の適用を受けないことから、有価で金属くずを買い取る業者側に本人確認の義務 はなく、盗品の流通を防げない、という現状があります。 金属スクラップヤード業者(金属リサイクル業やストックヤード業など)は、周辺住民の生活環境保全と、盗難抑止という2つの理由で規制の声が高まっているのです。
千葉、埼玉、福島の各県で条例化された金属スクラップヤード規制は、近隣住民の生活環境の保全を目的としています。埼玉県の調べでは、金属スクラップヤード業のうち半数以上が、近隣住民からの苦情・不安の訴えを受けています。その内容は騒音振動や飛散流出、悪臭、火災や水質汚染などです。問題のある業者でも産業廃棄物処理法などの法規制を受けないため、自治体レベルで対処療法的に条例の制定が相次いでいるという状況です。
なぜ、金属スクラップは法規制を受けないのでしょうか?金属スクラップは、再利用の価値があるので価値があるものとして業者が買い取る形で取引されます。金属スクラップ等は廃棄物ではないので、廃棄物処理法の適用を受けません。同じ理由で買い取りをした自動車の解体を行わず、部品のみを保管するような業態も、原則として自動車リサイクル法、廃棄物処理法の適用を受けません。 廃棄物処理法、自動車リサイクル等も保管基準の遵守や、周辺生活環境への配慮をきびしく問われますので、こうした法規制を免れうることは参入のハードルを大きく下げ、一部の業者の不適正処理を助長する結果となっています。
では、金属スクラップヤード規制条例とはどのような内容でしょうか?各自治体で制定している条例ですので、それぞれ別個の条例ですが共通点をあげてみます。 規制の対象とする取り扱い品目は、大きく、金属スクラップ、プラスチック類、雑品スクラップ(金属とプラスチックなどの混合物)となります。千葉市などはガラス、コンクリ、陶磁器なども含め規制の対象としていますが、おおむね、この3つの区分で条例化しているところが多いようです。 これらを特定再生資源物とよび、これらを一定以上の広さで屋外保管する業者を対象としています。 広さの条件は自治体によりまちまちで(千葉県などは無条件)、おおむね100平方メートル以上の事業場を持つ業者を対象としています。
規制内容は、自治体にもよりますが、標識の掲示、保管の高さや保管方法、事業場の囲いの設置、汚水対策、火災の発生・延焼の防止の措置、ねずみ害虫対策、飛散流出対策、騒音振動対策などを行うこと、帳簿を作成保存すること、名義貸しなどをしないことなどがあります。保管方法などは産業廃棄物処理法の保管基準などをベースとして、雑品スクラップの倒壊崩落を踏まえた保管基準などがあります。福島県などでは保管状況を確認するため、囲いの素材を中身を確認できるようアクリル板やスリット構造などにするよう求めています。
申請手続きは、産業廃棄物処理法の処分業許可や、自動車リサイクル法の解体業・破砕業許可と同じような行程を辿ります。周辺住民の生活環境の保全が目的として大きくありますので、住民説明会で周辺住民への事業内容の説明が必須です。申請書には、各種対策をどのように実行するかを手順にした「標準作業書」を作成し、添付する必要があります。
施行時点ですでに業として金属スクラップヤードを営む業者に配慮して、各県とも経過措置が導入されています。 図は埼玉県の例です。既存業者の負担を軽減するため段階的に保管基準や構造基準への対応を求める形となっており、基準を満たしていない部分があっても「みなし許可」として許可業者として取り扱います。他の県でも、対応までに1年の経過措置を設定している場合などがあります。
ざっと、金属スクラップヤード規制条例の内容をみてきましたが、適正に営業してきた既存業者には、このような規制の導入は大きな負担です。規制のない地域とある地域ではそのコストに大きく差がで出てしまいます。また、自治体レベルでの条例化は、自治体レベルの規制が厳しくなっても、不適正な業者は規制の緩い地域へ逃れ、それが放射状に全国的に広がることが予想され、全国レベルでの制度化をのぞむ声が多くあがっています。 金属スクラップヤード規制の概要についてのご説明でした。