廃棄物の不適正処理が発生した場合、自治体(都道府県知事や市町村長)はさまざまな権限を行使して対応します。今回は、自治体が持つ報告徴収、立入検査、措置命令、改善命令、事業停止命令、行政代執行といった権限について、詳しく解説します。
都道府県知事等又は環境大臣は、排出事業者などに対して法律の施行に必要な限度で、廃棄物又はその疑いのあるものの保管、収集運搬若しくは処分等に関して必要な報告を求めることができます(法第18条第1項・第2項)。
| 報告徴収の対象となる者 | 事業者、収集運搬又は処分を業とする者、一般廃棄物又は産業廃棄物処理施設の設置者、情報処理センター、政令で定める土地の所有者若しくは占有者、指定区域内において土地の形質の変更を行い若しくは行った者その他の関係者 |
|---|---|
| 報告の対象 | 廃棄物、廃棄物であることの疑いがある物 |
| 報告内容 | 保管、収集運搬、処分に関すること、処理施設の構造・維持管理に関すること、政令で定める土地の状況に関すること、指定区域内における土地の形質の変更に関すること |
| 報告徴収の対象となる者 | 再生利用認定業者、広域的処理認定業者、無害化処理認定業者、国外廃棄物又はその疑いのある物を輸入しようとする者若しくは輸入した者、廃棄物若しくはその疑いのある物を輸出しようとする者若しくは輸出した者 |
|---|---|
| 報告の対象 | 廃棄物、廃棄物であることの疑いがある物 |
| 報告内容 | 認定に係る収集運搬・処分に関すること、認定に係る施設の構造・維持管理に関すること、廃棄物若しくはその疑いのある物の輸入・輸出に関すること |
平成15年からは、「疑いのある物」についても報告徴収が可能になりました。報告拒否・虚偽報告には30万円以下の罰金が科されます。
都道府県知事等又は環境大臣は、その職員に、法律の施行に必要な限度で排出事業者などの事業所等に立ち入り、帳簿書類等の検査をさせ、試験に必要な限度において廃棄物又はその疑いのあるものを無償で収去させることができます(法第19条)。
| 立入検査の対象となる者 | 事業者、収集運搬又は処分を業とする者、その他の関係者 |
|---|---|
| 立入場所の対象 | 事務所、事業場、車両、船舶その他の場所、一般廃棄物又は産業廃棄物の処理施設のある土地又は建物、政令で定める土地 |
| 立入検査の内容 | 保管、収集運搬、処分、処理施設の構造・維持管理、政令で定める土地の状況、指定区域内における土地の形質の変更に関する帳簿書類その他の物件の検査 |
| 収去できるものの対象 | 試験のために使用するのに必要な限度の廃棄物、廃棄物であることの疑いのある物 |
| 立入検査の対象となる者 | 再生利用認定業者、広域的処理認定業者、無害化処理認定業者、国外廃棄物又はその疑いのある物を輸入しようとする者若しくは輸入した者、廃棄物若しくはその疑いのある物を輸出しようとする者若しくは輸出した者 |
|---|---|
| 立入場所の対象 | 事務所、事業場、車両、船舶その他の場所、認定に係る施設のある土地又は建物 |
| 立入検査の内容 | 認定に係る収集運搬・処分、認定に係る施設の構造・維持管理、廃棄物の輸入・輸出に関する帳簿書類その他の物件の検査 |
| 収去できるものの対象 | 試験のために使用するのに必要な限度の廃棄物、廃棄物であることの疑いのある物 |
こちらも平成15年から疑いのある物についても立入検査が可能になりました。検査拒否・忌避・妨害には30万円以下の罰金が科されます。
措置命令とは、処理基準に反する方法で廃棄物の「処分」が行われたために、生活環境保全上の支障を生じ、あるいは生ずる危険性がある場合に出される命令です。
命令内容は、「生活環境保全上の支障の除去や支障の発生防止のために必要な措置をとること」です。措置命令に違反した場合には、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金という刑事罰が科されます。
2010年の改正では、産業廃棄物の保管基準違反も措置命令の対象に追加されました。
この命令は、既に発生している問題を解決するための措置を取らせるものです。
都道府県知事等は、産業廃棄物などの処理や保管の基準が適用される者により、その基準に適合していない保管や処理が行われた場合、期限を定めてその保管や処理の方法の変更、その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができます(法第19条の3)。
| 命令者 | 対象者 |
|---|---|
| 市町村長 | (特別管理)一般廃棄物処理基準に適合しない収集運搬、処分を行った事業者・処理業者・国外廃棄物を輸入した者 |
| 都道府県知事又は政令市長 | (特別管理)産業廃棄物処理又は保管基準に適合しない保管、収集運搬、処分を行った事業者・処理業者・国外廃棄物を輸入した者 |
| 環境大臣 | (特別管理)一般廃棄物又は(特別管理)産業廃棄物処理基準に適合しない収集運搬又は処分を行った無害化処理認定業者 |
改善命令違反には、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科(法第26条)が科されます。
改善命令は、将来に向かって廃棄物の処理方法を改善させるための命令です。措置命令が「既に発生した問題の解決」を目的とするのに対し、改善命令は「将来の適正処理の確保」を目的としています。
不適正処理が行われた場合、その不適正処理が生活環境の保全上支障が生じている、又は生じるおそれがある場合には、法第19条の5、法第19条の6に基づく措置命令によって、排出事業者や処理業者に支障の除去や現場回復を行わせることになります。
都道府県知事等は、一定の条件の下で、支障の除去等を直接実施することもできます(法第19条の8)。これを行政代執行といいます。
投棄者が不明、資金不足等のため現状回復等の措置を取らずに都道府県等が支障除去を行う場合には、公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団に置かれた基金から支援する制度があります。基金の多くはマニフェストを頒布する団体からの出捐によるものです。平成11年から令和2年までに、108件、総額57億円以上の支援実績があります。
行政代執行には、以下の種類があります。
| 1 | 緩和代執行 | 「放置することが著しく公益に反する」という要件がなくなっています。命令が出されていることが前提です。 |
|---|---|---|
| 2 | 略式代執行 | 過失がなくてその措置が命ぜられるべき者を確知することができないときに行われます。 |
市町村長または都道府県知事が事業の停止命令を出す条件は以下のとおりです。
平成20年には、「産業廃棄物に関わる立入検査及び指導の強化について(通知)」が出されています。また、平成2年4月24日付け衛産第30号「産業廃棄物に関する立入検査及び指導の強化について」(旧立入検査通知)も参考になります。
| 原則として、複数の人員で行うこと |
| 立入検査者は、事業場等の管理に責任を有する者、産業廃棄物処理責任者及び技術管理者を立ち会わせて行う |
| 事前連絡をすることなく立ち入ること |
| 立入検査票は保存し、継続的な実施や年間計画の作成、許可更新のための審査資料として活用すること |
| 措置すべき事項については具体的に示し、原則として措置期限を定めること |
平成19年11月5日付け環廃対発第071105002号・環廃産発第071105005号通知「石綿含有廃棄物等の適正処理について」による「石綿含有廃棄物等処理マニュアル」を踏まえて、立入検査等が実施されます。
産業廃棄物に関する立入検査及び指導の強化について(R2通知)
公布日:H2.2.24
自治体は、不適正処理に対して報告徴収・立入検査・措置命令・改善命令・事業停止命令・行政代執行といった段階的な権限を有しています。これらの権限は、生活環境の保全を目的として、必要に応じて厳格に行使されます。
排出事業者・処理業者としては、日頃から法令遵守はもちろんのこと、自治体の指導に真摯に対応し、必要な記録や帳簿を適切に保存しておくことが重要です。また、立入検査は事前連絡なく行われることを前提に、常に適正な状態を維持しておく必要があります。
参考情報