Recycling金属リサイクル

令和7年 金属盗難対策が本格化

金属盗対策法 が今国会にて成立しました。1年以内に施行されますので、これまで古物、産廃などの規制の対象外となっていた「特定金属くず買受業」の届出が必要となります。また古物商法の施行規則も改正され、エアコン室外機、電線、グレーチングについて、10月から古物としての取り扱いを行うようにルールが変更されます。

背景に金属類の盗難急増

近年、金属の盗難が相次いでいます。太陽光発電のケーブルや、側溝のふた(グレーチング)、個人宅のエアコン室外機や給湯器までさまざまな種類のものが盗難され、金属くずとして転売されています。令和6年の金属盗難の認知件数は、4年前の約4倍に増加しました。この背景には、金属スクラップ価格の高騰と、金属くず買取に関する法規制の抜け穴とも呼ぶべきものが関連しています。

古物としての取り扱いの変更 これまで「金属くず」は除外

一度、使用された中古品などを買い取る業者は、古物営業法という法律に基づいて営業許可を受けています。古物営業法では都道府県公安委員会を受け、取引相手の本人確認や、帳簿保存、不正の品であると認められる場合の警察への申告義務などがありますが、金属くずなどは、これまで古物営業法の範囲外となるため、これらの規制を受けてきませんでした。
古物は、中古であっても客観的に本来の用法にしたがって使用できるか、を基準に古物に該当するか判断するためです。
廃棄物であれば、廃棄物処理法やその他リサイクル法の適用も受けますが、価値のあるものとして業者に買い取ってもらうため、これにも該当しない状態でした。
こうした法規制をかいくぐる形で盗難物が流通する状態であったため、今回金属盗対策法や古物営業法施行規則の改正で、盗難品流通の監視が強化されます。

金属盗対策法

(盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律)
先にご説明したとおりこれまで金属くずは古物に該当しませんでした。古物に該当しない金属くずの買い取りについては、いわゆる金属くず条例が制定されている 17 道府県を除き、規制が存在せず、条例を制定していない自治体では、本人確認されることなく金属くずが売却できるなど、盗品の売却が容易な状況でした。 金属リサイクル業 盗難の現状と金属くず条例
そこで、政府は金属盗対策に関する検討会などを設け、全国的な法規制のあり方について検討を行ってきました。検討会を経て法案が第177回国会で6月13日成立し、6月20日公布されております(令和7年法律第75号)。

金属盗対策法の内容

特定金属くず買受業の届出・銅及び政令で定める金属を特定金属くずとし、特定金属くずの買受業を営む場合、都道府県公安委員会への届出義務・届出違反は、6カ月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に該当
買受する相手方の本人確認と記録の作成・保存 ・特定金属くずの買受け時の相手方の本人確認義務
・当該本人確認事項等に関する記録の作成・保存義務
取引記録の作成・保管 特定金属くずの買受けを行った場合、買受けに係る相手方の氏名、内容等に関する記録を作成・保存義務
警察への申告買受けに係る特定金属くずが盗品に由来するものである疑いがあると認めたときの警察への申告義務
その他特定金属くず買受業を営む者に対する指示、営業停止命令並びに報告徴収及び立入検査等
・その他 犯行用具の規制(ケーブルカッター等) 犯行使用のおそれが大きい工具の正当な理由なき隠匿携帯を禁止

特定金属くず買受業とは

特定金属くず」 とは、現状盗難被害の多い金属のことです(当該金属を使用して製造された物品の窃取を防止する必要性が高い金属(銅及び政令で定める金属)により構成されている金属くず)。 この特定金属を買い受ける業者を、「特定金属くず買受業」と呼びます。
特定金属くずの買受業を営む場合、今後、都道府県公安委員会への届出が義務となります。金属盗対策法の公布から遅くとも1年以内には施行されるため、1年以内には、各公安委員会で届出ルールが整備されるものと思われます。

古物営業法施行規則改正

室外機、電線、グレーチングを対象に追加

古物営業法では、被害の多い室外機、電線、グレーチングが対象として追加されたため、本人確認の実施や、取引記録など、古物営業法に則り取り扱うよう施行規則が変更されます。施行規則は令和7年10月1日より施行予定です。
  1. エアコンディショナーの室外ユニット及び電気温水機器のヒートポンプ
  2. 電線
  3. グレーチング(金属製のものに限る。)

近年、金属類を被害品とする窃盗の被害が急増していることを踏まえ、金属製物品のうち、近年窃盗の被害が特に多い電線、グレーチング、エアコン等の室外機の古物市場への流入を抑止するため、規則を改正し、古物に該当する電線、グレーチング、エアコン等の室外機についても、取引金額の多寡にかかわらず、本人確認義務等の対象とすることとなりました。

古物営業法では、取引記録の記録すべき項目の中に、古物の特徴(色、材質、シリアルナンバーなど) などもありますが、電線、グレーチングなどの識別をどのように行うかなどは令和7年8月時点では明確になっておりません。

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